2012年4月アーカイブ

<リーダー会通信 # 10 >

|リーダー会通信|2012年4月号より

パウロの演奏会まで半年を切りました。ここで、今後の練習に
生かせるようこれまで先生方に言われたことをまとめてみました。

1 音を揃えよう
 お互いの声を聴きやすくすることを主な目的として今月から小グループ
による練習を取り入れています。松村先生から「三つの音と倍音を聴こう。
聞こえない人は隣の人と声を合わせよう」と言われました。

  ・隣の人と声を合わせる。
  ・他のパートの声を聴いて和音を感じる。
  ・立ち上がりの音を何処からとるのかを各自しっかりと決めておく。
  ・下降の際、音が暗く、下がらないように気を付ける。
  ・ソリストになったつもりで頑張るようなことはしない。
  ・立ち上がりにアクセントを付けない。最初がフォルトだからといって
   最初から頑張りすぎない。拍の中でフォルテに持っていく。
  ・休符で「一休み」をしない。
  ・ディミヌェンドでは音を支える。急速に音を小さくし過ぎない。

2 言葉を揃えよう
 2003年に行われたスタバトマーテルの演奏会は湘フィル史上指折りの好評を得ました。しかし、アンケートの中に非常に気になる指摘があります。「言葉が揃っていない。いくら152名の演奏でもしっかりと揃えることはできる筈だ」というものです。

  ・立ち上がりや指示された場所で指揮棒を見る。曲の最後に顔を上げる。
  ・立ち上がり前の準備は十分に。不用意に声を出さない。
  ・言葉のくくりを考えて歌う。言葉の切れ目やカンマのある所を繋げない。
  ・子音を拍の前に出し母音をきちんと拍に乗せる。
  ・(ドイツ語子音の)語尾をお腹に力を入れて鋭い発音をする。
  ・leben の ben のような言葉の終わりの方を強くしない。
  ・nは口を閉じない。mは口を閉じる。
  ・小節をはさんで同じ音が続く時は次の小節の頭に向かい息を入れ、
   同じ音が続く場合にはレガートにする。
  ・コラール(3番など)は「八分音符割に」と言われている。                                                                                                

   特に四分音符のパートは他のパートの八分音符の言葉に合わせて歌う。

  ・Uウムラウトは [i] の声を出しながら唇を[u] の形に丸める。日本語の(ルーズな) 「ウ」にしない。  

   できない人は「イ」と言う方がまだましだ。
  ・開いた「エ」ではなく。
  ・Herr や Herrlich の発音[er]を 巻き舌にしてタイミングを合わせる。
  ・機会を見てリズム読みに努める。

3 リズム(テンポ)を合わせよう
 基本的には指揮を見ることに尽きるので「言葉」と重なる部分がありま
 すが。

  ・立ち上がりから全員参加。途中からばらばらと参加するようでは立ち上がりの
   切れ味が感じられない。
  ・コラールはテンポがゆっくりとしている。指揮棒を追い越さない。
  ・パウロは原則として「中切」、つまり拍の中で言い終えることになっている。
   次の休符や小節まで伸ばさない。
  ・クレッシェンドでは加速する。
  ・インテンポを守り、勝手にリタールダンドを始めない。

 「あなた方は高校生ではないんです。簡単に出来る年齢ではありません」が斉藤先生の
  口癖です。私たちは年齢に負けない努力と集中力が必要です。当面7月の合宿を目標に

    レベルアップを図っていきましょう。

オラトリオ「聖パウロ」覚書2

|投稿|2012年3月号より

メンデルスゾーンの才能と情熱がなければ、「聖パウロ」という曲は誕生しなかったのですが、その誕生を促すいくつかの外的な影響力がなければ、この曲は誕生しなかったのであり、その影響力を推測しながら、メンデルスゾーンの作曲のプロセスを辿ってみたいと思います。

1.「聖パウロ」作曲の背景
 一つの大きな要因は、バッハからの影響でしょう。20歳の1829年にバッハのマタイ受難曲をベルリンで再演し、それが1830年代初頭の「聖パウロ」の構想検討となり、1832年には台本制作を開始しました。しかしこの曲が生まれる力となったのは、1835年にバッハが活躍したライプチッヒからの要請で、当地のゲヴァントハウスオーケストラの指揮者に就任したこと、及び「聖パウロ」の完成を熱望していた父の死でした。それにより作曲は加速し、メンデルスゾーンがディレクターを務めた第18回ライン下流域音楽祭のオープニング曲として1836年5月22日に初演されました。
 ライプチッヒはバッハがカントールとしてカンタータ、受難曲などの教会音楽を作曲した地でしたから、バッハを深く研究する機会に恵まれたことでしょうし、この曲の序曲にバッハのカンタータ140番(「起きよ」と声がわれらを呼ぶ)のモチーフが採用され、パウロの回心の場面である第一部の山場の16曲にPh.ニコライ作詞のこのコラールを用いていることからもバッハの影響を感じます。
  バッハはライプチッヒの地で初めて、宗教改革者ルターが求めていた礼拝形式の追及ができ、コラールを用いた音楽による神の言葉の語りかけ(説教)を実現しようとしました。
カンタータ140番は1731年11月25日(三位一体後27主日)礼拝にその日の福音書日課(マタイ25章1節以下)の言葉に従ったPh.ニコライの曲を用いて作曲されました。
  更にルターは新約聖書の中の使徒パウロによる「ガラテア人への手紙」の研究から「信仰義認(人々の功績によらず神からの一方的な恵みによる救い)」という信仰にたどりつき、宗教改革運動を始めたのですから、プロテスタントルーテル派の信仰を持っていたメンデルスゾーンは使徒パウロが異邦人伝道のために書いた書簡及び使徒言行録に記されたパウロの言葉を彼の信仰の土台としていたことになります。
  バッハによってイエス・キリストの受難曲は完成されておりましたから、メンデルスゾーンがイエス・キリスト復活と昇天後の聖霊の働きを具現化したパウロの異邦人伝道物語を音楽で語りかけたいと願うのは自然の成り行きだったと思えます。

2.バッハとメンデルスゾーンとの差異
  バッハは18世紀に教会の礼拝という枠の中でイエス・キリストの受難曲を完成させました。一方、19世紀という市民社会が形成され、教会を含め既成の枠から解放され、自由な発想を楽しむことを求める時代に生まれたメンデルスゾーンはバッハの伝統を継承しつつ、その制約を超え、人々に生きる希望・喜びを与えたかったのだと思います。
  テーマの差があり、直接の比較は出来ませんが、マタイ受難曲の冒頭の暗い旋律と聖パウロの冒頭の序曲の明るさを比較すればその差は明瞭です。
  バッハのカンタータ140番はアドヴェント(待降節:キリストの降誕準備の4週間)前の主日の礼拝で歌われ、待降節の先にある主イエスの降誕の喜びを歌いました。
  一方、メンデルスゾーンの「聖パウロ」の初演の5月22日は聖霊降臨日(復活のイエスから福音伝道の命令を受けながらも、ユダヤ教徒の迫害を恐れ隠れて生活していた弟子たちに、上から聖霊が下り、聖霊の力によって弟子たちが変えられ死を賭して福音伝道を始めた)ですから、『「起きよ」と声がわれらを呼ぶ』のコラールの意味がイエス・キリストの降誕の準備から、再臨を待つ準備に変わっております。

3.メンデルスゾーンの思い入れ
  ユダヤ系ドイツ人であるメンデルスゾーンは、神の救いが、選民であるユダヤ人の独占ではなく、ドイツ人、日本人を含めた異邦人に拡大した事実を彼の音楽で実現しようとし、1836年5月22日の聖霊降臨日の演奏会に向け全精力を投入しました。合唱とオーケストラの総合力で彼の意図を語りかけるため、オーケストラ譜は直前まで手書き修正の連続でした。
  彼の指揮で356人もの大合唱団と172名のオーケストラをまとめあげた演奏に、聴衆は熱狂し、シューマンは「現代の至宝」と絶賛したのですが、27歳の若いメンデルスゾーンの心の中には、まだまだ不十分な点が残ったようです。
  しかしながら、19世紀以降社会の世俗化が進む中で、彼のように旧約聖書や新約聖書の言葉が自然と美しい音楽となって湧き上がるような作曲家はその後生まれませんでしたから、彼が若さという特権をフル活用し、大馬力で仕上げたオラトリオ「聖パウロ」のような作品は、彼の「エリヤ」を除くと、もうその後出来なくなってしまいました。

4.「聖パウロ」の場面構成
  今回は大雑把な場面構成のだけに留め、次回から少々私の独断・偏見を入れながら、
個々の場面でのメンデルスゾーンの工夫点の解説に入る予定です。 

<一部>

   (曲)           (場面)

 1曲~ 3曲       呼びかけと詠唱

 4曲~11曲       ステファノの殉教

12曲~22曲       サウロ(後のパウロ)の回心と洗礼

<二部>

23曲~27曲        伝道1 パウロとバルナバの派遣

28曲~31曲              伝道2  パウロへの迫害

32曲~36曲       伝道3  リュストラにおける足なえの治療

37曲~40曲       伝道4  ユダヤ教徒と異教徒によるパウロの迫害

41曲~43曲       パウロのエフェソの教会との別れ

44曲~45曲       パウロの殉教の死と信仰の証  

                                                (B) 指原 建司

        

                                   

湘南フィルハーモニー合唱団
公式サイト

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