2013年11月アーカイブ

<リーダー会通信#11> 「強(したた)かな心」

||2013年10月号より

  歌い込みも佳境に入ってきました。そろそろ、より顔を上げて歌いたいものですね。
  さて、前回「合唱人生」という題で、「合唱に対する熱き思い―強かな心」について拙文を書かせていただきました。今回は、その「強かな心」の続きを少し別角度から捉えてみたいと思います。

  またまた、Combinir di Corista(以下、「コンビニ」と表記します)の話から始めさせていただきます。
 昨年8月にコンビニは、デンマークの第4回ラナス国際合唱コンクールに出場し、見事グランプリ及び観客賞を獲得したことは、御存じの方も多いと思います。実は、このコンクールは、ハプニングの連続だったようですが、特に大変だったと思われるのが、現地でメンバー2名が転倒して怪我をするという事態が発生した事でしょう。その内一人は、コンクール本番の前夜に足の骨を骨折するという重症でした。外国の知らない土地で、コンクール出場どころではないともいえる状態になってしまい、また例え出場したとしても、動揺してまともに歌えない事態もありえたかもしれません。
それでも、先生方の配慮と仲間の支え、更に高福祉国家デンマークの手厚い医療体制(外国人でも医療費無料)のおかげで、無事出演出来た(車椅子で)とのことです。その困難を乗り越えてのグランプリですから、本人は勿論メンバー及びそれを聞いた我々の感動もより大きくなるというものでしょう。おそらくこの非常事態に至って、更に「強かな心」が利いたのではないかと思われます。勿論、それを裏付ける実力があればこその話ですが・・・。

かといって、体調が悪いのに無理して出演することを推奨するものではありません。昔、某合唱団が演奏中に団員の一人(若い女性)が体調を崩して、倒れる事故がありました。それも最後列から後ろに倒れたので、大騒ぎ(救急車)となり、演奏会も暫く中断しました。それこそ結果的に一人で「ぶち壊した」例となってしまいました。本人は、一生懸命だったと思うのですが・・・。
皆様もどうぞ演奏中具合が悪くなったら、倒れる前に静かにお座り下さい。また、その前に出場を辞退する勇気が必要かもしれません。とにかく体調管理には、十分お気を付け下さい。お互いに顔色をよく見て確認し合いましょう。

さて、もうひとつ感動的なお話です。もう25年程前ですが、私自身がステージで体験したことです。小澤征爾指揮、新日本フィルで第九を歌ったのですが、第三楽章のadagioの途中で、何と停電になってしまったのです。
会場は、目白の東京カテドラル教会で、当時の照明は、中央に吊り下げた巨大な水銀灯一基のみでした。それが本当にゆっくり夢の様に消えていったのです。合唱団席に座っていた私は、微妙に色彩を変えつつ暗くなっていく様子を見て、一瞬演出かと思ったくらいです。ところが、本当にそのまま真っ暗になってしまって驚きました。が、更に驚いたのは、何とそれでも演奏は、そのまま続いているではありませんか。小澤さんは、暗闇の中で指揮を続け、新日本フィルは、小澤さんの白い袖先に反射する非常用誘導灯の僅かな光で指揮を感じていたのです。暗闇の中に悠々と流れるadagio。不思議な光景でした。オケのメンバーは、どんな思いで演奏していたのでしょう。また、停電に騒がなかった観客も偉いと思います。照明がゆっくりとfade - outしたこともありますが、音楽の力による所も大きいと思われます。
そして、演奏は、第三楽章を全て演奏し切って一旦中断しました。その後、舞台関係者が照明器具や蝋燭を持って駆け回る中、私は、今まさに行われたことに感動すると共に、今日は出番がないかもしれないと思っておりました。が、20~30分後、水銀灯が復旧して無事演奏することが出来ました。停電の原因は、当日降った雪の為、変電所の変圧器の変調ということでした。本当に一寸先は、闇ですね。

更にもうひとつ外乱に負けずに演奏した話です。今から40数年前、私の大学の入学式でのことです。私は、新入生として講堂で、そのすぐ後に私が入団することとなる男声合唱団が歌う「学歌」を聴いておりました。そこへ十数名の全共闘が乱入して来て、「インターナショナル」を歌い始めたのです。正面から「学歌」、左の方から「インターナショナル」が聴こえる・・・これまた不思議な光景が広がりました。そしてそのまま合唱団は、乱れることなく最後迄歌い続けました。その後全共闘は、「帰れコール」で退散しましたが、今思うと、これも全共闘だったから歌い続けられたのかもしれません。本当のテロ集団だったら、とても出来なかったでしょう。

上記2件は、いずれも多少の外乱があっても指揮者は、振り続け、演奏者が演奏し続けたケースです。そう、演奏者は、指揮者が振るのをやめてしまったならばともかく、また各自に危険が迫ったならともかく、指揮者が振っている限りは、外乱に負けず演奏を続ける強い意志(強かな心)が必要なのですね。

何も映画「タイタニック」の弦楽四重奏団の様に「使命感」及び「覚悟」の演奏を求めるものではありません。ただ合唱団は、外乱にとても弱く、しかもまた、一人の変調が皆に伝染していって全体がおかしくなることも多々あります。少なくとも自分の演奏中は、多少の外乱・変調があっても、それに耐える「強かな心」を持って演奏に臨みたいものだと思う次第です。そして日々その心掛けで練習する中で、ハーモニーと共に心も鍛え上げていけたら良いですね。
湘フィルは、一年以上かけてじっくり歌作りするとても贅沢な団です。音取りから歌い込み、そして仕上げと、どの段階もそれぞれ楽しいものですが、段階ごとに進歩が見えるように一層良いハーモニーを心掛けて歌いたいですね。それも心の隅に「強かな心」を持ちながら・・・。                    (B) F.Y

湘南フィルハーモニー合唱団
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