湘フィルの目指すマタイ

1月28日(土)バッハ マタイ受難曲 68・1番 磯子公会堂

「コンパクト。酔っている暇はない。そんなに単純な作業じゃない。ロマンティックな歌じゃない、時代錯誤。今直さないと手遅れ。」厳しい言葉が矢継ぎ早に飛ぶ。ピリッとした緊張感の中、先生の曲作りのコンセプトがびんびんに伝わってきて、私たちもそれを形にしようと頑張った。頭でわかっていてもその通りに歌えないもどかしさ、苛立ちももちろんあったが、それでも湘フィルの目指すマタイ像が見え始めてきたと思う。
 今日もヘミオラ、スラーのかかった八分音符、長くのばす音の歌い方など、「音の出し入れのニュアンス」を徹底して練習した。マタイでは、「音のどこに重心をかけるか」や「鋭角なリズム」を以前にも増して特に重視していると思う。今までに教わった、音のパルスやフレーズそのものが感情表現になり、言葉と密接に結びついていることを考えると当然だろう。68番では八分音符と十六分音符二つで泣いている様子が表現されていた。
 マタイを歌っているうちに、これほど具体的な描写の音楽はない、と思うようになった。曲想の表示は何もないが、全ては五線の中に書かれているのだ。私たちがこの曲を自分のものにして、指揮に合わせて楽譜通りに正確に歌えば、それだけで受難物語に関する様々な感情が表現され、何より先生の創り出すマタイの世界観が現れるに違いない。そして、そこには自ずと団員の個性が発揮され、思いが込められ、湘フィルだけの特別なマタイが作られていくだろう。3DM

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