インテンポの嘆き

5月13日(土)バッハ マタイ受難曲 67・68・1番 港南公会堂

 まずは67番のMein Jesu。Meinのnをきちんと発音する練習を徹底する。nを大切にするだけで、Meinに気持ちがこもっていく。そしてJesuのJeに重心をおく練習。こういう語句の意味とぴったり合った、言葉を大切にする練習をしていると、私たちはどんどん感情移入していき、ああ、イエス様、私のイエス様、とテンポそっちのけで嘆き悲しみ、そのうち自己陶酔が始まり、ついには指揮棒が止まって、「雰囲気じゃないんだってば。冷たく歌ってくれる?余計な感情はいらない。気持ちいい状態で歌うとだめだね。」とダメ出しが入り、あ、そうだ、テンポテンポ、インテンポ、と我にかえるいつもながらの光景。「聴いている人が気持ちよくなるように」というおなじみの注意もやはり言われてしまった。
 68番では八分音符と十六分音符二つの練習を徹底する。そうだ、これは泣くリズムだった。インテンポの正確なリズムの中で泣かなければ。今日はもう一つの泣き方も習った。76小節からのくだり。八分音符二つずつの動きですすり泣く。
 1番も常に八分音符を意識して歌う「リズムに流されない厳しさ」を求められた。大好きな1番をインテンポ、マルカートで刻みつけるように歌っていると、身体の奥で八分音符がどくどくと脈打ち、全身の血がたぎるようだった。3DM 

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