狂気の片鱗

2025年7月26日(土) 港南公会堂 ベートーヴェン〈ミサ・ソレムニス〉

今日はいよいよ第3曲Credoの練習に入ると言われていた日、けれどもまずは第1曲Kyrieと第2曲Gloriaの振り返りからスタート。音程がおぼつかなかったりリズムが崩壊したりして何度も止め止め。みんなのピッチがあやしくなる度に先生は苦笑いしつつ人差し指で「上げて!」サインを出し、まるでダ・ヴィンチの名画『洗礼者聖ヨハネ』みたいなことになっていた。そうこうするうちに今日の練習時間の半分を費やしてしまう。

いざ気を取り直してCredo。出だしの元気なベースからすぐに全員が続いて、人々が信仰の誓いを高らかに宣べるこの曲は、Kyrie・Gloriaとは空気ががらりと変わった感じがする。先生は30小節あたりで「このへんからベートーヴェンが狂気に入る」とぽつりと(そしてなんだか嬉しそうに)おっしゃった。そしてその言葉通り、これまでにはなかった急な転調が現れ、驚きわたわたする団員一同。これまでも充分に難しかったけれど、新しいタイプの難しさである。でもこの整然としてない感じが、天上の世界とは違う人間らしさなのかもしれない。

ベートーヴェンの「狂気」とはいかなるものか。今日はその扉の、ドアノブに手をかけようとしたところで終わってしまったけれど、しっかり復習して次回に臨めば素敵なクレイジーワールドに進めるに違いない。みんな夏バテに気をつけて頑張ってこーぜ!…と高校野球の県大会決勝戦をTV観戦しつつ。 listopad