10月21日(土) 第30回記念演奏会 バッハ マタイ受難曲 ミューザ川崎シンフォニーホール
心に沁みる、すばらしい演奏会だった。コラールの美しい響きが会場を満たした。49番のアリアはソプラノとフルートが天国から聞こえてくるようだったし、それにもかかわらず叫ぶ「十字架につけよ」ではみな本当に狂っていた(ようだった)。イ短調の下降音階4音でイエスが死んでしまうと静寂が訪れた。そして62番コラールの悲壮感漂うwの子音がごく弱いのにはっきり聞こえてきた。あそこで無頓着に息を吸う音を立てる人は一人もいなかった。会場を支配する雰囲気で、普段の注意事項が自然に守られたのだ。
先生は本番も指揮棒なしだった。素手での指揮も温かみがあっていいものだ。指揮のスタイルは明らかにオケ合わせの時と変えてきていた。63bは、練習よりも格段に遅いテンポだった。より良い演奏の追求なのか、感情の赴くままなのか、本番も平気で新たな挑戦をしてくる攻めの姿勢。すごいものだ。
私は大好きなマタイで思い入れが強かったせいか、今までになく緊張してしまい、1番の途中でいきなり足がガタガタ震え出して自分でもびっくりした。声は震えないように頑張った。3ページ分くらい歌ったら直ったが。座席からはピアニストの先生がとてもよく見えた。楽譜も鍵盤もそれを弾く指もよく見えた。隣にはイエスがいて、まるで聖母マリアのようだった。
大成功の演奏会だったが、今振り返ると課題もあると思う。問題の子音はやはりバラバラの箇所もあった。フーガは興奮した群集になりきってしまい(?!)主旋律を際立たせる配慮が足りなかった気がする。入りは頑張ったと思うけれど。次回の演奏会ではそれらを少しずつ克服し、またきっと進歩しているだろう。ああ、それにしても本当に終わってしまったのだ。もう、マタイ歌えないんですね。3DM
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