心に残る演奏会でした。準備のため8時半に会場入りしたのですが(本当は9時からですが守衛さんがドアの中に入れてくれました)すでに横殴りの吹雪。20年ぶりという記録的な大雪になりました。朝から開催や払い戻しの問い合わせやキャンセルの連絡が相次ぎ、今日は自分たちだけで演奏することになるのかもしれないと思ったりもしましたが、なんと330人ものお客様がいらしてくださいました。荒天にもかかわらず、交通手段もままならぬ中、本当に聞きたくて来てくださった方々の拍手には格別のものがあって胸が熱くなりました。
自分たちだけだったとしても、いい演奏をしたい。どんどん吹雪が激しくなる中、団員の中にはそんな気持ちが高まっていたように思います。ゲネプロは集中していて今までにないような一体感がありました。ブラームスのヘミオラはとても統制がとれていたし、シューベルトのフーガも強弱のコントロールや掛け合いを楽しめる感覚がありました。ベートーベンのピアノのこぼれる宝石のような美しい音の粒、それと絶妙に絡み合うオケとのアンサンブル、こころが震えて涙が出てしまいました。ソリストの皆さんもそれぞれに本当にすばらしく、そこにある音楽の魂が私たちにも乗り移ったのでしょうか、本番はさらに集中力が高まり、難所だったところが快感に変わり、どの曲もなんていい曲なんだろうと思いながら歌いました。歌いながらこみあげてくるものがあり、この合唱団とマエストロとピアニストとオーケストラとソリストとの出会い、ともに奏でた音楽、共有した時間、ほんとうにしあわせでした。私たちにもこんなことができるんだと、不思議な気持ちになりました。
打ち上げのケータリングの業者さんも、吹雪の中よく整えてくださいましたよね。裏方を支え、朝から夜まで駆けずり回っていた副代表はじめ総務の皆さんにも頭が下がります。宴を終えた頃にはほとんどの交通機関が止まり、帰宅難民となった私たちは近くにあった「万葉の湯」へ移動。歩くのも大変な強風の中、やっとの思いでたどりつくと、先着の団長グループがすでにくつろいでいて、結局数十名の団員がここで夜を明かしたようです。「千と千尋の神隠し」の油屋のような広い廊下と階段にちょっとワクワク。仮眠のできるリラックスルームは帰宅難民であふれ、リクライニングチェアだけでなく床にも寝ている人がいっぱいで野戦病院状態でした。
いろいろな方とお話もできてお風呂に入って、思いがけない修学旅行気分。これも忘れられない思い出になりました。翌朝シャトルバスで外に出ると、みなとみらいの駐車場の出口に大きな雪だるまがいて、思わず手をふりました。そのまま横浜で所用のため、帰宅したのは夜、夢のような時間でした。
雪に閉ざされたあの時間と空間。きっと音楽の神様が手のひらにのせてくださったのかもしれない。そこには、その日ただ1回の演奏会のために注がれてきたたくさんの努力や思いがあって、目に留まったのだとしたらうれしいですよね。練習の過程にはままならぬことの方が多かったですが、歩みを止めずもっといいものを目指していたら、もっと前へすすめるのかもしれない。そういう贈り物っだたのかなという気がします。すっかり晴れていいお天気になった空にむかって言いました。みんなみんなありがとうございました!
コメント
本当に!
何度ありがとうを言っても、言い足りません。感動がまだ続いています。
無事帰宅までにもそれぞれドラマがあったことでしょう。次の練習でみんなに会うのが楽しみ☆
すばらしい名文の中に、コンサートの日のすべてのことがらが織り込まれており、いつまでも私たちの胸の中によみがえることでしょう。いただいたあの拍手の強さと大きさはとても330人の方々だけのものとは思えないほどで、お客様の思いが伝わってきました。でも皆さんどうやって帰宅されたのでしょうか、いろいろとドラマがあったでしょうね。
多くの著名人によるコンサートを世界各地で拝聴してきましたが久しぶりに感動したコンサートでした。豊かなハーモニーを奏でておられたコーラス、そしてソリストも実に素晴らしかった。
ベルリンフィルを想像させるようなオーケストラの大黒柱であるチェロと低音楽器が優雅でかつ力強い響きのオーケストラは聞き応え、見応えありました、眼福なコンサートでした。
わざわざいった甲斐がありました。券がなくて飛び込みにも拘らず、受け付けの対応も丁寧で気持ち良く過ごしました。
松島さんのコメントがうれしくそして有り難く、ストーリーテラーを自称する弟にこのブログを紹介したところ、「湘南フィルハーモニーの公式ページ見ました。あの文章はリアルで簡潔ですばらしい。」とコメントしてきました。
私も繰り返し読んでも胸が熱くなります。いつも素晴らしい練習日誌を届けていただき感謝しております。