受難コラール

7月1日(土)バッハ マタイ受難曲 30・53b・54・58b・58d・60・61b・61d・62番 保土ヶ谷公会堂

 54番は4番目の受難コラール。歌詞は他のコラールと異なり痛めつけられるイエスをリアルに描写しており、悲壮感に溢れている。まずはアウフタクトの出だしをぶつけずに次の1拍めに向かってクレシェンドする、という注意。これだけで切迫感が増していく。Wundenの収め方は10対7。今日は58dでも10対7が出てきた。10対8はよく出てくるが、今日は7。より一層差をつけるということだろうが、8と7の正確な歌い分けなどもちろんできないので7の気分で歌っていた。
 58bと58dは2コーラスが競走馬のように鼻息荒く出て、1コーラスも追いかけてすぐに合わさり4声のフーガになるという似たような歌だ。攻め込んでつっこんでつんのめってやっとインテンポだと言う。もう大変だ。充分準備運動をしていないとアキレス腱が切れそうだ。
 62番は受難コラールとしてもコラール全体としても最後の曲だ。この曲の3小節めで初めてソプラノが今までにない動きをみせる。15・17・44・54では、ソプラノは他のパートがどんなに変化に富んだ美しい動きをしようと、真面目にオリジナルのメロディを守って歌ってきた。アルトに誘われても、テノールに挑発されても、ベースにそそのかされても、かたくなに愚直に決められたメロディだけを歌ってきた。それが、イエスの死を目の当たりにして、ついに耐えられずに3小節目で揺れ動く。本来のメロディを逸脱し、八分音符と十六分音符で、68番と同じ泣くリズムを歌うのだ。 
 印象に残ったのは、次のフレーズにいく時に息継ぎの音をさせないという注意だった。もうこの注意だけで先生が62番に求めるものがわかると思った。3DM

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